赤ちゃんの防災は、家族の備蓄をすべてリュックに詰めることではありません。避難しながら使う物は持ち出し袋へ、数日間の生活を支える分は自宅へ分け、赤ちゃんを連れて動けるかまで確かめることが大切です。
まずは、いつもの授乳用品・おむつ・着替えを出し、「今すぐ持っていく分」と「家に置く分」に分けてみましょう。特別な防災セットを一度に買わなくても、普段使う物を少し多めに持つところから始められます。
情報確認日:2026年11月1日。乳児から就学前の子どもがいる家庭向けの、平時の備えを整理する記事です。災害発生時は地域の避難情報と周囲の状況を確認し、安全確保を優先してください。

結局、何から用意すればいい? 最初の3つ
- 避難先と移動方法:自宅の災害リスクを確認し、赤ちゃんとどこへ、どう移動するかを決める。
- 持ち出し袋:避難中の授乳・食事、おむつ交換、寒暖への対策、連絡に必要な物を優先する。
- 自宅の備蓄:いつもの使用量から必要数を計算し、水・食料・衛生用品・トイレを備える。
荷物が重くて動けないなら、持ち出し方を見直します。ただし、子どもに欠かせないミルクや薬をただ削るのではなく、使いやすい少量包装を選ぶ、袋を分ける、家族で分担する、早めの避難先を確保するなど、運べる備えに組み替えましょう。
以下の「持ち出し/自宅」の分け方は、消防庁の備え方を基に、育児中に使いやすく整理したものです。すべての家庭に同じ重量や個数を当てはめるリストではありません。

出典:消防庁「非常持出品を準備する」、内閣府「自然災害への備えは万全ですか?」。
家に備える前に 在宅避難できる条件を確認する
備蓄があることと、自宅にとどまってよいことは別です。地震後、建物や周囲が安全で生活を続けられる場合は在宅避難も選択肢になりますが、倒壊・火災・津波などの危険があれば避難を優先します。建物の安全が分からないときに、自己判断で「備蓄があるから大丈夫」と決めつけないでください。
水害では、地震の判断をそのまま使えません。ハザードマップで、家屋が流されるおそれのある区域か、居室より深く浸水するか、浸水が長引いたとき水・食料・トイレなどを確保できるかを確認します。「マンションの上階なら必ず安全」ではありません。
風水害で避難に時間がかかる乳幼児とその保護者は、危険な場所から早めに避難する計画を立てます。警戒レベル3「高齢者等避難」は高齢者だけのための情報ではありません。情報が順番に出るとは限らないため、危険が迫ってから荷造りを始めないようにしましょう。
避難所だけでなく、災害リスクの低い親族・知人宅なども平時に相談しておく候補です。移動先・経路は、災害の種類と地域の情報に合わせて確認してください。
出典:東京都「在宅避難の準備を始めよう」(2026年9月)、東京都「風水害に対する備えと行動」、気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応」、内閣府「避難情報に関するガイドライン」(2026年3月改定)。
持ち出し袋に入れる物 避難中の困りごとから選ぶ
大人用の防災用品に、子どもの生活に欠かせない物を足します。下の項目にチェックを入れながら、わが家で使う物だけを選んでください。飲料水・ライト・充電器など家族共用にできる物は、袋ごとに重複して入れすぎないよう分担します。
授乳と食事
- □ いつもの授乳方法に合うミルク・授乳用品。液体ミルクなら使える乳首やアタッチメント、必要な清潔な容器も一緒に。
- □ 離乳食が始まっている場合は、食べ慣れた月齢・形状の食品と、使い捨てスプーン等。開けてそのまま食べられる製品か表示を確認。
- □ 飲料水と、必要な調乳用の水・お湯を確保する方法。粉ミルクは水だけで溶かす前提にしない。
- □ 母乳の場合は、必要に応じて授乳時の目隠し、タオル、母乳パッドなど。授乳する人の飲食も忘れない。
おむつ交換と着替え
- □ 今のサイズのおむつ、おしりふき、使用済みおむつを入れる袋。
- □ 薄手の着替え、タオル、季節に合う防寒・雨よけ用品。
- □ 手指や身の回りを清潔にする用品。用途に合う物を選び、子どもの手の届かない場所に保管。
移動・連絡・受診の備え
- □ 使い慣れた抱っこひも等。子どもの月齢・体格への適合と、説明書どおりに装着できることを確認。
- □ ライト、充電器、現金などの家族共用品。
- □ 母子健康手帳の必要ページのコピー、お薬手帳・服薬内容、アレルギーや連絡先のメモ。持参する原本類も平時に決めておく。
- □ 服用中の薬があれば、備える量と保管方法を医師・薬剤師に相談。処方薬を自己判断で増減しない。
- □ 小さく軽い、使い慣れた絵本やおもちゃなど。なくてはならない物と分け、運べる範囲で。
個人情報を含むコピーやメモは防水袋などにまとめ、紛失に注意します。母子手帳等のコピーは情報を伝える補助で、すべての手続きで原本の代わりになるわけではありません。
ベビーカーだけに頼らず、段差やがれき、停電したエレベーターを想定して移動方法を考えます。抱っこひもは子どもの顔を確認でき、鼻と口を覆わない状態で、使用説明書に従って使ってください。
参考:消防庁「わたしの防災サバイバル手帳」、東京都「妊産婦・乳幼児を守る災害対策ガイドライン」。抱っこひもの安全は消費者庁の注意喚起も参照。持ち物の分類・分担欄は当サイト独自の整理です。
家に置く備蓄は いつもの使用量から数える
一般家庭の水・食料等は、最低3日分、できれば1週間分が内閣府の目安です。一方で、子どもが食べられる食品は代替しにくいため、一般の目安だけで終わらせません。農林水産省の要配慮者向けガイドでは、ビン詰やレトルトの離乳食について、少なくとも2週間分の備蓄を案内しています。
これは2週間分を全部持ち歩くという意味ではありません。食べる量、保管場所、期限、入手しにくさを見ながら自宅の在庫を整え、その一部を持ち出し用に分けます。アレルギー対応食や特別なミルクが必要な場合は、普段の医療・栄養相談先と備えを確認しましょう。
おむつの計算例
普段1日に8枚使う家庭が7日分を用意する例なら、8枚×7日=56枚。8枚は一律の推奨交換回数ではなく、計算を説明するための仮定です。実際の使用枚数に置き換え、下痢などで使用が増える場合や買い足しにくさも考えて調整します。
普段使いの在庫と防災用を別々に数えて二重購入するより、「家に合計何枚あり、そのうち持ち出し袋に何枚入れるか」を決めると管理しやすくなります。サイズ変更時には袋の中も入れ替えましょう。

水の3Lを 赤ちゃんの飲水量にしない
よく見る「1人1日3L」は家庭の飲用・調理用の備蓄目安で、赤ちゃんに1日3Lの水を飲ませるという意味ではありません。授乳量は普段の方法に合わせ、粉ミルクは製品指定の濃さを守ります。調乳用の水と、手洗い・器具の洗浄や冷却に使う水を分けて考え、断水時に清潔を保つ方法も準備しましょう。
出典:農林水産省「命をつなぎとめる水」。
食べ物だけでなく トイレと生活用品も
- □ 飲料水、食べ慣れた保存食品、必要なミルク・離乳食。
- □ おむつ、おしりふき、処理袋、着替えなどの補充分。
- □ 大人・幼児が使う携帯トイレ、トイレットペーパー、衛生用品。
- □ 電池、照明、充電手段、季節に応じた暑さ・寒さへの備え。
水が出ても、排水管の被害等でトイレを流せない場合があります。家で過ごす準備は、食料と水だけでなく排泄の備えまで一緒に考えます。重い水は高い棚を避け、転倒・落下や子どもの接触に配慮して保管してください。
出典:内閣府 家庭での備蓄目安、農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(2026年9月版、離乳食の備蓄)、東京都 在宅避難の備え。
授乳方法と成長に合わせて 備える物を変える
月齢だけで機械的にそろえるより、今、何をどうやって飲み、食べているかを基準にします。離乳食をまだ始めていない子へ、災害のために早く始める必要はありません。
母乳中心なら 授乳を続けられる環境も準備する
飲み慣れた方法を大切にし、授乳する人が休息・飲食を取れるよう家族で支えます。「災害時は必ず母乳が止まる」「母乳なら備えは何も要らない」のどちらも決めつけません。授乳が難しい、飲めているか心配な場合は、避難先の保健師などに相談してください。
粉ミルクなら お湯と衛生管理まで一組にする
粉ミルクを備えるだけでは足りません。安全な水、必要な器具、手洗いや器具を清潔にする方法、70℃以上のお湯で調乳し、授乳できる温度まで冷ます手段をセットで考えます。温度を下げるために指定量を超えて水を足すなど、濃さを変えないでください。
調乳は飲む直前に行い、飲み残しは再利用しません。調乳後2時間以内に使わなかった物は廃棄します。この2時間は作り置きの推奨時間でも、飲み残しを再利用できる時間でもありません。熱いお湯や調乳直後のミルクを赤ちゃんの近くで扱わず、必ず適温に冷ましてから与えます。お湯や清潔な器具を確保できない状況では、自己流の代替方法を試す前に、保健師・助産師等の支援者へ相談してください。
出典:厚生労働省 粉ミルクの安全な調乳方法(2023年度会議資料)、明治 粉ミルクの使い方(残乳の扱い)。
液体ミルクなら 容器だけでなく飲ませ方を確認する
乳児用液体ミルクは調乳用のお湯を必要としないため、断水・停電への備えの選択肢です。ただし、製品に合う乳首・アタッチメント、または清潔な容器が必要になります。どの缶にも同じ乳首が付くわけではありません。必要な器具は製品の説明書どおりに洗浄・消毒します。買って保管するだけでなく、平時に使い方と子どもが飲めるかを確認しましょう。
未開封の保存条件と期限は製品表示を優先します。開封したらすぐに使い、残った分を次の授乳まで保存しないでください。容器の破損・膨張や内容の異常がある物は使いません。液体ミルクは水で薄めず、そのまま使用します。粉ミルク用の濃度調整をしないでください。
出典:消費者庁 乳児用液体ミルクの安全・衛生上の注意、明治 アタッチメントの使い方。器具の適合条件は各製品の説明書を確認してください。
離乳食が始まったら 食べ慣れた形状と食具を
ベビーフードは、月齢表示だけでなく、普段食べられる硬さ・粒の大きさ・アレルゲンを確認します。温めず食べられるタイプは便利ですが、製品の表示を確認してください。開封後はすぐに食べさせ、食べ残しを次の食事に回しません。冷蔵できない状況での取り置きも避けます。災害時に初めての食品をまとめて試す計画にせず、普段の食事で使える物を備蓄へ回します。
1歳以降も、大人の非常食をそのまま食べられるとは限りません。硬さや味付け、食べ慣れを確かめ、食具と一緒に用意します。食品だけ準備して「開封する道具がない」「スプーンがない」という状態を避けましょう。
出典:厚生労働省「妊娠中・育児中の食中毒予防について」(2023年度会議資料、粉ミルクの調乳)、消費者庁「乳児用液体ミルクってなに?」、こども家庭庁掲載「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年3月、p35)、日本母乳育児支援連絡協議会「災害時の乳幼児栄養に関する指針」(2026年8月改訂)。個別の授乳量・治療用ミルク・アレルギー対応は医療者に相談してください。
家族で埋める 備えと分担のチェック表
次の欄をスマートフォンのメモ等に写し、今の生活に合わせて埋めてください。全部を購入リストにするのではなく、家にある物を確認する表として使えます。
| 確認すること | わが家の記入欄 |
|---|---|
| 記入日/次に見直す日 | __年__月__日/__年__月__日 |
| 授乳・離乳食で外せない物 | ________ |
| おむつ 1日の枚数 × 備える日数 | __枚 × __日 = 合計__枚 |
| 合計のうち持ち出す枚数 | __枚(残りは自宅の備蓄へ) |
| 薬・アレルギー等の情報 | 保管場所____/相談先____ |
| 赤ちゃんを連れて移動する人 | 担当____/不在時____ |
| 持ち出し袋を運ぶ人 | 担当____/袋の置き場所____ |
| 避難先・連絡方法 | 災害別の避難先____/連絡方法____ |
大人が1人だけの時間帯でも実行できる計画にします。赤ちゃんを連れて移動し、靴を履き、袋を持って玄関を出られるかを平時に確認しましょう。重さに無理があれば分担・収納・避難先を見直し、危険な階段や道路で無理な訓練をする必要はありません。
期限が近い食品から使い、使った分を補充する「ローリングストック」に、子どもの成長の確認を足します。おむつのサイズ、食べられる物、乳首や食具、季節の衣類を見直す日も決めておくと、使えない在庫を減らせます。
出典:消防庁「家庭の防災会議」。表の項目・算定例・整理手順は、当サイトが家庭での確認用に作成したものです。
よくある疑問
市販の防災セットを買えば足りますか?
共通用品をまとめるには便利ですが、今のサイズのおむつ、飲めるミルク、食べられる離乳食、薬などは家庭ごとに違います。セットの内容と家にある物を照合し、不足分だけを足しましょう。
何kgまでなら持ってよいですか?
この記事では一律の重量を指定しません。子どもの体重、抱っこ方法、階段、同行者、体調によって負担が変わるからです。実際に使う袋と移動方法で確認し、子どもを支える動作や移動を妨げない量に調整します。
持ち出し袋が用意できていないときは?
平時なら、まず普段のお出かけ用品を確認し、不足を少しずつ補えます。災害時に危険が迫っているなら、袋を完成させるために避難を遅らせないでください。避難先で授乳・食事・衛生用品の不足を早めに支援者へ伝えます。
今日やること いつものお出かけ用品を2つに分ける
今日は「授乳・食事」「おむつ」「移動と連絡」の3つを確認し、持ち出す分をひとまとめにしましょう。次に家の在庫を数え、不足する水・食品・トイレ用品等を無理のない順で補充します。
大切なのは、たくさん買うことより、必要な物が使える状態であり、赤ちゃんと安全に動けることです。備蓄と避難計画を一緒に見直してください。


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